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September 26, 2018

南北の泥棒天国の日

泥棒研究会編著『盗みの文化誌』青弓社、1995年という本を入手したが、なかなか面白い。

泥棒といえば、石川五右衛門、ルパンなどというところだが(もちろんこの人たちの考察もあります)、中でも興味深かったのが、「作物盗みのフォークロア」(吉成直樹)が紹介する。お月見泥棒など、中秋(9月15日)のころに、月見団子に始まり、農作物を積極的に(?)盗む風習について述べられている。どうもこの「お月見どろぼう」はサトイモ文化と密接な関係があり、中国南部に起源があるという。

東アジアの「盗み」の文化といって思い起こすのが、私は契丹や女真の放偷である。島田正郎先生の研究にもある。

島田 正郎「契丹放偷攷」 社會經濟史學 13卷3號, pp.6, 1943年
島田 正郎「契丹放偷攷」 史學雜誌 54編7號, 1943年

中国のブログの記事や百度百科を見ると


『契丹国志』巻27治盜「正月十三日、放國人做賊三日、如盜及十貫以上、依法行遣。」
『松漠紀聞』「金國治盜甚嚴、毎捕獲、論罪外、皆七倍責償。唯正月十六日則縱偷一日以為戲。妻女・寶貨・車馬為人所竊、皆不加刑。是日、人皆嚴備、遇偷至、則笑遣之。既無所獲、雖畚钁微物亦攜去。婦人至顯入人家、伺主者出接客、則縱其婢妾盜飲器。他日知其主名、或偷者自言、大則具茶食以贖、〈謂羊・酒・肴饌之類。〉次則攜壺、小亦打袴取之。亦有先與室女私約、至期而竊去者、女願留則聽之。自契丹以來皆然、今燕亦如此。 」
南宋・文惟簡『虜廷事実』「虜中毎至正月十六日夜、謂之放偷。俗以為常、官亦不能禁。其日夜人家若不畏謹、則衣裳、器用、鞍馬、車乗之属為人窃去。隔三両日間、主人知其所在、則以酒食銭物購之、方得原物。」
明・郎瑛『七修類稿』事物5放偷「金與元国俗、正月十六日謂之放偷。是日、各家皆厳備、遇偷至、則笑遣之。雖妻女・車馬・宝貨為人所窃、皆不加罪。聞今揚州尚然。」

簡単に言うと、正月十三日から十六日の元宵節付近では、放偷(自由泥棒?)の日というのがあり、器物や宝物だけでなく、妻女まで奪ってよいという。明代には揚州にもそういう風習が残っていたなんて驚きですね。

お月見泥棒が南方系なら、「放偷」は北方系の泥棒天国の風習のようである。日本の小正月のどんど焼きのやけぼっくいが「泥棒よけ」になるといわれるが、これって「放偷」と関係ないのかな~?またまた妄想が膨らみますが、なかなかこれを論証するのは難しそうで、これくらい(メモ)だけにしておきます( ´艸`)。

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