涙と笑いの築地魚河岸三代目
松竹の往年の名作シリーズものと言えば、「男はつらいよ」であるが、この男はつらいよ、純粋にただ笑ってみていられましたか。
小学生のころ、お正月と夏休みには映画に行くという風習が我が家にはあった。おやじ抜きの場合はハリウッドものなどの大作が多く、おやじが一緒の場合は、「男はつらいよ」を何回か見に行った。
そのころ仕事で多忙なせいか、せっかく映画館に行っても、居眠りするせいか、おやじは大作ものだと映画のあらすじがわからず、頓珍漢な感想に終始するので、子供としてもおやじと映画を見るときはフーテンの寅さんが無難なんだと思っていた。
ところがこの「男はつらいよ」が鬼門の場合がある。決して下町育ちではないんだけれども、おやじの場合、映画の中で寅さんのことを笑うシーンで、どちらかというと寅さんの味方になって、私たち(母、私、弟)と口論になる場合が多かった。(たとえば有名な寅さんのメロンねた。寅さんが不在の間にマドンナがメロンを手みあげに持ってきたが、いつ寅さんが帰ってくるかわからないので、皆でメロンを食べてしまった。食べ終わったころに寅さんが偶然帰ってきたので、皆でメロンの皮を隠す。しかし、偶然寅さんがメロンの皮を見つけて、まさかマドンナが来たとは思っていないので頓珍漢なことをいう。今年のスイカは変な形をしているとかなんとか。するとおいちゃん、おばちゃん以下良心の呵責に耐えかねて、マドンナが手みあげをもってきたが、寅さんがいつ帰ってくるかわからないので、食べたと謝る。しかし、マドンナがらみといういつもの舞い上がっている状態で変にテレているといことに加えて、自分がのけ者にされたという怒りでごまかそうと、大人げなく例のごとくおいちゃんたちやタコ社長と大喧嘩になってしまう。大意)
確かに寅さんが正しいのだが、ここは大人げない寅さんを笑うシーンなのだが、ある意味本気で寅さんの味方をするので閉口する。映画の意味がわかんないんじゃないかと子供心に心配した。
ところが、後年どうして寅さんの見方をしたのかがわかってきた。おやじも寅さん同様に人一倍テレたのだ。テレ隠しにこういう悪口雑言を言ったような気がする。
さて、いよいよ本題、築地魚河岸三代目。これまた寅さん同様シリーズ化するようだが、またまた狙い目が寅さんと似ているようである。エリート商社サラリーマン(赤木旬太郎:大沢たかお)が、恋人(明日香:田中麗奈)の実家、魚辰(築地の魚仲卸)を手伝うことに、会社での出来事もあって、商社をやめてしまい、なんと魚辰の三代目を継ぐことに…(詳しくは映画館でどーぞ)
映画で描かれる築地の人びと(たぶんだいぶ誇張されているのとは思うのだけど)、実際にもしその中に私が入れば、なんというか人情押し売りのようで、たぶん旬太郎のように順応するんじゃなくて、反発するんだろうと思うのだけれども、やはり映画はよくできている。一連のドタバタが涙と笑いなしには私は直視できない。
バカバカしいんだけれども、うまくできているなあ。釣りバカ日誌(西田敏行)の方がもっと純粋にとんでもサラリーマンを笑えるんだけれども、このテレ隠しの涙と笑いのツボをつく、寅さん路線はどうも築地魚河岸三代目が継いでいるようだ。(久しぶりにビックコミックの連載の方がどうなっているのかチェックしてしまった。)
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